今回は、小学生の段階でどのような学習が大切になってくるかについて迫ってみます。
2020年度より学習指導要領が改定され、英語の追加をはじめ、小学生の学びも大きく変わってきています。小学校6年間での標準授業時数合計では、前述の英語にあたる外国語活動計70単位(小学生3・4年)、外国語(小学生5・6年) 計140単位のほか、国語、算数では今までと変わらず計1461単位、計1011単位となっています。理科、社会においても授業時数削減はなく、英語の追加導入により総授業時数は増加、子どもたちは今まで以上に多くの情報を処理し、学びについていかなければなりません。
また、中学、高校の学びにおいても、各科目の知識や技能が十分備わっていることを前提に、社会や生活の一場面における問題の解決策を考察する能力が重要視されてきています。
これらを踏まえ、家庭教師での小学生指導において、定着を目指す力を大きく3つに分けてご紹介いたします。
1.正しく計算する力
2.文章を正しく理解する力
3.ノートを使って正しく復習する力
1つ目は正しく計算する力です。この力がきちんと備わっているかで、中学、高校の数学の学習に大きな差が生まれてきます。
小学生中学年~高学年での「分数、小数、比が理解できない」「計算間違いが多い」といった悩みは、小学生低学年の計算力が足りていないことが原因の一つと考えられます。まず、かけ算の九九をはじめ、二桁の繰り上がりや繰り下がりの計算など、基本的なことが定着しているかの確認から入ります。
また、「途中で数字が変わってしまう」(0と6を見間違えたなど) 、「計算過程が散らばっている」(後で見返したときにどの部分で間違ったかが読み取れないなど)といったケースもよくあります。この際、それぞれのミスの原因をできる限り具体的に言語化する作業、計算の際の約束事を決めていく作業を進めていきます。「約分した後の数字は見落とさないように大きく書く」「計算の=はそろえて書く約束にする」などです。
これらの他にも時間制限があると焦ってしまうなど様々なケースがありますが、いずれの場合もどういうミスの特徴があるのかを知ったうえで、子ども自身が意識して取り組んでいくことが改善のポイントとなります。家庭教師の授業内でも、前向きにかつ的確なアドバイスにて、一つずつ根気強く長期間向き合うことが必要です。
また、正しい姿勢で問題に取り組めているかという点も大切です。
利き手のみを動かして肘をついている姿勢では、集中力も低下し学習効果が上がりません。背筋が伸びて両手が机の上にあるという姿勢を、算数の計算に限らずどの学習においても継続することが大切です。
算数の計算練習ドリルが嫌いで集中力が続かず、途中でよく投げ出してしまうといった場合、遊び感覚で数字に向き合えるようにハードルを下げていくことも有効です。
例として、多面体で数字のついているサイコロや、トランプなど数字が書いてあるカードを利用し、出た数に従って計算練習をする手法があります。家族や友人と勝負したり、一定時間内に何個正解できるかを競ったりするのもよいでしょう。暗算力、瞬発力を鍛えることができます。
2つ目は文章を正しく理解する力です。
まず、自由に使える漢字、語いを増やしていくことが文章を正しく理解する土台となります。漢字の学習では、学校の漢字ドリルを毎日、宿題範囲に沿って進めることが基本です。その際、「必ず声に出しながら練習する」、「新しい例文を自分で考えて書いてみる」といった点が実行できると学習効果が高まります。
漢字、語い学習の目標設定の一つとして、漢字検定を利用することもできます。10級の小学1年生修了から5級の小学6年生修了まで、幅広く級を選択することができます。確実に受かる級の受験からスタートし、合格という結果を得ることでモチベーションアップにつながることが期待できます。
次に、読解系の問題では文章中に書いてある言葉を正しく読み取り、それを根拠に解答できているかが大切になります。間違いが多い場合、「言葉を読み飛ばしている」、「言葉を自分勝手に変えている」ケースが考えられます。算数の復習法と同様に、「間違えた理由は何か」、「どう考えるべきだったか」、「その根拠となる文章はどこにあるか」を考えないと復習の意味は薄くなります。主に記述問題で、自分の書いた答案のどこが良くなかったのかを考え、具体的なコメントを子ども自身で書いていけることが目標になります。書いたコメントが適切なものか、しっかり考えられているかどうかを家庭教師の授業内で確認します。
読解力をつける手立てとして、日々の読書習慣を身に付けることも重要です。小学生低学年では、マンガをはじめ文字が書いてある本であればどのようなものでもよいでしょう。子ども自身が興味をもって楽しめる本を選び、本に触れる習慣をつけることが大切です。小学生中学年以降から、徐々に文庫本にも手を広げていきます。講談社様の『青い鳥文庫シリーズ』には、『星の王子さま』や『源氏物語』といった名作から最近アニメされた物語まで、読みやすいレイアウトにて多種多様な本があります。本以外にも、小学生新聞を活用するのも一つの手です。
そのほか、耳からの学習として、子ども向けの名作を題材にした朗読CDやオーディオブックも有効です。書店や通信販売でも多くの種類が扱われています。本は目から、朗読CDやオーディオブックは耳から、入ってくる情報をもとにイメージを再構築する練習ができます。
3つ目はノートを使って正しく復習する力です。
まず、学校の授業ノートを誤字、脱字なく正しく書き写すことができているかがチェックポイントとなります。間違いが多い場合、書いたノートの内容を音読するなど、一つひとつの言葉を正しくとらえていく練習を繰り返していきます。
また、ノートを使って復習を行う際、間違えた問題を解きなおし、「正解なら〇、再度間違えた問題は赤字で答えを書いて終わり」としてしまい、内容の定着に苦戦するケースもよく見られます。上記の算数の計算や国語の読解の中でも触れましたが、他の理科、社会、英語など、どの教科においても復習の際は、誤答の原因を突き止める作業が必要不可欠です。
手順としては、まず×となった問題の中から「本当はできたはず」というものがないか確認し、それらに再チャレンジしていきます。正解できたときは、間違えたものと何が違っていたのかを検証して、ノートにコメントを書いていきます。この際コメントの内容は、「問題文をちゃんと読む」などより「記号で選ぶ問題が出てきたときは、あてはまるものすべてを選ぶのかを確認する」など、できるだけ具体的に、あとで自分が見返して説明できる形にしていきます。
加えて、ふせんを活用して疑問点をその都度メモしていくことができれば、後でノートを見返した際、非常に効率よく復習ができます。疑問点が解決でき、ふせんが外れていくと気持ちいいという感覚もモチベーションアップにつなげることができます。
また、中学受験の場合、思考を体系化するために、小6からを目安にまとめノートを作成することをおすすめします。例を挙げると、算数では「この問題の考え方は自分では思いつかない」といった問題の発想法を、自分の言葉で言語化する流れです。社会の地理の場合、「白地図の中に自分の言葉で地形図や産業の特徴を集約できるか」、歴史では「時代背景を踏まえてストーリーを説明記述できるか」といった具合です。
これらはかなりレベルの高い作業になるため、まとめ方の内容や方向性が正しくなるよう、家庭教師の授業内でもサポートを行っています。
おわりに
中学、高校では小学での学習内容をもとに、より多くの高度な内容を理解していく必要がありますが、「覚えるしかない」といった丸暗記型の学習に陥ってしまう子どもたちも少なくありません。
しかし、暗記物として覚える以上に大切なのが、その内容全体を根拠も含めて深く理解することです。数学の公式や歴史の年号、出来事をたくさん覚えても、公式の証明や使い方、歴史の流れや背景を理解することを試みなければ、高校入試や共通テストでも高得点をとることはできません。
小学生の段階でこれらの3つの力を身に付け、正しい方法での学習が継続できれば、その先の学習の中でも大きな成果を得ることにつながります。