20年以上、国語の担当をさせていただき、一番驚かれるのが、国語に「解法公式」があるということです。今回は「解法公式」と、関連する「国語の学習法」についてお話しさせていただきます。
中学入試や高校入試の受験生には、やや難しい内容も含まれていますが、将来の大学入試へ向けて参考になるかと思いますので、大学入試の受験生だけでなく、最後までお付き合いください。
(公式1)「今」を「君」はどう生きますか?
国語の問題の根底にある究極のテーマが、昔でも将来でもなく、混沌とした「今」を、ほかの誰でもない「あなた自身」はどう生きるのかということです。従って、西田幾多郎、西周、内山節、和辻哲郎などの哲学者やその系譜をひく著者の作品や地球温暖化や多様性など現代が直面する問題がテーマとして採用されています。また、家族や社会とのかかわり方など「生き方」をテーマとする作品も好まれます。
難関な哲学をわかりやすく解説した本もたくさん出版されていますので、「受験生」になる前に一度、全体像を概観しておくことをお薦めします。(プレジデント社から出版されている「哲学用語図鑑」など)
(公式2)解答はすべて本文中の「根拠」に基づく
これは「論理的文章」でも「物語文」でも「随筆」や「鑑賞文」でも同じです。「根拠」とは行動や考えの「理由」であり物語文であれば「行動、態度や表情、発言」に表れます。
ここで注意しないといけないのが、いずれも「文脈」や「背景」をおさえたものでなければならないということです。
しかし、実際には「文脈や背景」を無視していたり、ご自身の考えや感情で解いてしまう方が多いのです。原因は、受験生が「自分なりの考えや意見を形成し、アイデンティティを確立する年ごろ」だからです。その時期に自分の考えや感情を棚上げしておいて、筆者の立場に立ち、本文中の根拠のみを「根拠」に問題を解くということは、大人が思う以上に「至難の業」なのです。自己を確立する時に、同時に第三者の視座を持たねばならないのです。だからこそ「根拠」おさえを意識した「精読訓練」を「意識的」に繰り返す学習が不可欠です。この学習が不十分だと、試験本番でいつのまにか「自分の考えや感情」で「自分だったら」という前提で解いてしまうということになります。
(公式3)傍線部や空欄補充問題の解法
傍線部の問題や穴あき補充の問題は「その部分を含む1文」全体に目を通すことから着手します。その1文に指示語が含まれていますので、その指示語が何を指しているのか特定します。東大などの難関大は更に指示語を2文、3文と戻らなければならないこともあります。そして傍線部や穴あきの前後関係をおさえるという手順になります。
(公式4)文脈把握や論旨把握の指標
文脈把握や論旨把握の為に特に注意する指標となるものがいくつかあります。例えば、以下のものです。
② キーワード…本文中に繰り返し出てくるワードで記述問題では欠かせません。
②筆者の規定語…筆者が独自に作り出した言葉で説明がなされ「 」で示されたりします。
③ 言いかえ表現…同じ内容を別の言葉で表現し、本文中に繰り返してできます。
④ 比喩表現、対句的表現、倒置表現など…筆者が意識して使用している修辞技法です。
⑤ 「~ねばならない」「~のはずである」などの強い言葉。
⑥ 譲歩構文…一般論から筆者の主張へ。「確かに一般的には……だが~」などの~が筆者の主張。
⑦二項対比…特に抽象度の高い論理的文章では筆者が二項のどちらの立場か、常に考えながら論を追う。
(公式5)「誤っているものを選べ」問題の落とし穴に注意!
学生は幼いころから「正しい」解答を選んだり、書いたりする試験が身に沁みついています。従って、選択肢を見ているうちに、知らず知らずのうちに「正しい」選択をしてしまいがちです。問題文の「誤っているもの」の部分を大げさに何重にも〇印をつけ、自分で意識づけの工夫をし、選んだら本当に「誤っている」か確認するクセをつけましょう。
(公式6)ベン図(オイラーの図)や人間関係図を利用しよう
特に生物を題材にした問題の場合などカテゴリー分けを要する問題は、ベン図を書いて考えを整理しましょう。登場人物が多いケースでは、必ず人脈図などを書いて文脈を追いましょう。
(公式7)好きなものから食べる人になろう
記述問題では、書くべきキーワードに配点がなされていきます。書いても書かなくてもよいものや書いた方がよいものよりも、まずはキーワードを意識して「書かなければならないこと」や「書くべきこと」から書いていく、つまり好きなものを最後に食べるのではなく、最初に好きなものから食べるのが記述問題だと考えましょう。
(公式8)知見の総合格闘技!
国語の問題は基本的には初見のものばかりであり、以上のような公式に従って解くわけですが、題材が興味のあるものだったり、既知の内容であればそれに越したことはありません。題材は多岐に渡りますが、理科や社会、数学、情報や道徳など全て活用し、また貪欲に語彙を増やしてください。目先の受験テクニックにとらわれるのではなく、本質に目を向け、真正面から取り組み、苦しみ、悩み、そして楽しみ、至高、至福の時を手にしてください。国語は受験突破だけでなく、その後みなさんの一生を支える「知見」を手にする壮大な科目なのですから。