今まで20年近く数多くの医系志望受験生を担当させていただき、是非ともお伝えしたいことが2つあります。
1つ目は、数学や理科ではなく、「共通テストの国語や社会」で夢を絶たれないでほしいということです。
受験は、医系であっても文系科目を含めた総合点で合否が決まります。しかも、その第一ステップの共通テストでは、実質「足切り」があるのが厳しい現実です。
医系志望者で受験直前期に入ると、数学や理科ばかりをやるようになり、文系科目、特に国語を勉強しなくなる方が意外と多いという気がしています。国語を勉強しなくなる理由を聞いてみると主に以下の意見が聞かれます。
① 国語はやってもやらなくても点数が変わらないと思うから。
② 理系の師から「直前期は配点比率の高い理系科目にシフトした方が良い」と言われたから。
しかし、冷静に考えてみてください。①については、点数が「変わらない」ことが大切なのです。つまり、現状維持です。共通テストで8割以上得点する受験計画の中で見積もっている国語の得点を大きく落とさないことが大切なのです。直前期に国語を全くやらなくなると目に見えて点数は落ちます。その理由は「国語」が扱っている言葉や題材が学生の「日常」とはことなっていることと、後述する「解法公式」を忘れ「感覚解き」に知らず知らずのうちに戻ってしまうからです。
例えば、論理的な文章では、「形而上、形而下、アンビヴァレンス、パラダイム、パラドックス、敷衍(ふえん)、アウフヘーベン」など基本的な用語が使われますが、日々触れていないと「論理的感覚のズレ」が生じてしまいがちです。また、古文の「山深み」「なのめなり」「事に殊に、言に、異に」の類や「語の識別」など、漢文の勝(たふ、あげて)、与(あずかる、くみす)、中(あつ、あたる)、「於是、是以、以是」、寡人、小人、匹夫、夫子、為人など頻出の文法、古語、句法、語彙の最終確認も必要があります。
②については、どのような師でも自身の担当されている教科を愛しておられ、生徒に点を取らせてあげたいと思うのは当然ですし人情です。しかし、共通テストになり益々「国語」は全教科の基礎であり合否のカギを握る要となっていることを強く意識する必要を感じます。どうか直前期であっても、国語を含め万遍なく取り組み総合点を意識し「落とし穴」にはまらないようラストスパート頑張ってください。
是非お伝えしたい2つ目は、「国語」も論理学の一つなのです、「公式」を意識して解いてほしいということです。これはむしろ中3~高2生にお伝えしたいことでもあります。生徒や保護者の方とお話しして感じるのが意外と師匠から国語の「公式」を聞かされていないのではということです。特に論理的な文章では、例えば次のような「公式」を念頭に置いた意識的な学習が不可欠です。
a.「2項対比」を意識すること。
2つの事柄を比較することでより分かりやすく、また説得力をもたせることができる為、論理的な文章は意識的に2項対比で書かれています。筆者は2項のどちらの立場なのか常に意識しながら読み進めます。
b. 英語と同じようにディスコマーカーに注目すること。
英語のindeed … but~やMay … but~と同じように譲歩構文や筆者の規定語(通常「」などで示されてます)、比喩、「ねばならない」などの強い言葉、対句的な表現、倒置などは意識して注目する必要があります。
c. 筆者の論の「展開の仕方」に寄り添って考える。
これに関しては、東大英語の「段落整序問題」が好例であり、国語を解くうえで参考になります。
d.良問ほど、どの小問も「論旨」にかかわっている。
したがって、選択肢問題では、そもそも論旨に反するものは正しい選択肢ではありえない。
e.「裏返しの解答」はバツである。
回答は真正面から答える必要があります。例えば「あなたはハンバーグとハンバーガーのどちらが好きですか」の問いに対して「ハンバーグが好きです」は正解ですが「ハンバーガーが好きではありません」はバツとなります・意外と「裏返しの解答」をする生徒さんが多いことに気づきました。
f.「哲学」が役に立つ。
テストに引用される論理的文章の筆者は、根底に洋の東西を問わず「哲学の系譜」を持つ方が多い気がします。考えてみれば、これは当然なのですが、素人にわかりやすく書かれた本も数多く出版されているので全体像を概観しておくことをお勧めします。など。
以上、国語の「公式」について一部を概説しましたが、次回詳説させていただきたいと思います。少しでも学習のヒントになるものがあれば幸いです。