こんにちは。大分校の小野です。
東京大学の二次試験で、こんな問題が出たことがあります。
英語の長文を読んで答える問題の中の1問です。
「語り手は、ある職業に従事している。その職業名を日本語で記せ」
答えにあたる英単語は文中に書かれていません。文中にはpaintbrushes(ペンキ用のはけ)や ladders(はしご) 、buckets(バケツ)などの記述があります。それらから推測すると、正解は「塗装業」です。「何だ、簡単じゃないか」と思う人もいるかもしれません。確かに、東京大学に挑戦するレベルの受験生にとっては難しい問題ではないでしょう。
ただし、この問題にはいくつかハードルがあります。
1,ある程度の難しさの英語長文が読めること。
2,長文の中から手がかりとなる情報を拾う。それは単語か、表現か、文章か、とにかく何が必要な情報かは自分で判断するしかない。
3,拾い集めた情報から仕事を推測する。文中の道具を使うのはどんな仕事か、頭に浮かばなければならない。
4,その職業が日本語で何というか、正確に書く必要がある。たとえば、最後に「ペンキ屋」と書いたとすれば不正解。ペンキを販売する店の経営者と誤解されるから。
そもそも課題の長文自体がそれほど難解なものではありませんし、手がかりになる単語もそれほど難しいものではありません。しかし入試に出題されるということは、志望者を選別するためのフィルターになるということです。それぞれの過程は簡単でも、解くための手順は自分で考え、それを一つ一つ確実に実行しなければ解けないのです。
この「知識を使って考える」タイプの問題は、2021年1月に初めて行われた大学入学共通テストと通じるところがあります。共通テストはそれまでのセンター試験から「思考力、判断力、表現力」を一層重視するとされているのです。単なる知識問題ではなく、複数の知識を組み合わせて解く問題がどの教科でも増えました。
本来この「論理的に推測する力」は、人間が知識を身に付け、数多くの挑戦、失敗という経験を積み重ねて培っていく能力です。それをたかだか十数年の人生経験しかない若者相手に試すのですから、なかなかキツい要求ですよね。