大学受験レベルの英文を読めるようになるには何が必要か? 結論は、「何を言いたいのか」を常に考え続けることです。特に、英語の大原則を理解したうえで貫くことです。中高生に注意してほしい点を挙げ、英文などを交えて少し詳しくお話します。
目次
1) 英文は前から読む。 直読直解に慣れて下さい。
2) 指示語の復元を徹底する。 「~って感じかな」は駄目ですよ。
3) パラグラフ内の英文の働きを意識する。 英語の論理展開に慣れて下さい。
4) 英文構造(文法・語法も含め)を軽視しない。 何のための文法ですか?
5) 英単語・熟語の表面的暗記をやめる。 意味ではなく使い方を定着させて。
6) 幅広い読書で現代文読解にも力を入れる。 英語が読めない理由は母国語にも?
7) off, awayなどの働きをイメージする。 イディオムの丸暗記をしていませんか?
8) 定型表現の変化を見破る。 実際の英文がパターン通りであるはずがないでしょ!
9) コロケーションの習得に時間を割く。 スピーキング能力がないのは何故ですか?
10)徹底的に音読をする。 音読の効用を実感したことはありますか?
1) 英文は前から読む。 直読直解に慣れて下さい。
英文が読めないと、特に知らない語句が多いと、分かる所ばかりに目が行き、
不自然な読み方をします。後ろから中心に考えてしまいます。役を考えることに頭が行き過ぎてそうなります。当然、以下のような英文が全く読めないで意味をでっち上げます。
I thought you thought I thought you killed the man.
私は思った / あなたが思ったと / 私が考えたと / あなたが男を殺したと。
(あなたが男を殺したと私が考えたとあなたが思ったのでは、と私は思った。)
Thinkの後にSV~が来ると考えて読み進めるだけです。直読直解に慣れて下さい。
2) 指示語の復元を徹底する。 「~って感じかな」は駄目ですよ。
日本語と同じく、何となく読んでいます。指示語の復元は、関係代名詞の先行詞を考えるとき以外でも実行すること。
ThisやThatなどが指す意味を特定せずに
読み進めて上手く行きませんよ。立ち止まって考える癖をつけて下さい。
3) パラグラフ内の英文の働きを意識する。 英語の論理展開に慣れて下さい。
一文を読むのに四苦八苦して、「論理展開どころではない!」というのが正直な意見でしょう。しかし、パラグラフ内の各英文の役割が分かれば、内容を推測することが可能になります。文脈を無視すると会話でも相手の発言を誤解してしまいますよ。単純で、分かりやすい例を示しましょう。
He didn’t study English with her yesterday.
彼は昨日、彼女と英語の勉強をしなかった。 簡単ですか? 疑問が残ります。
彼が、昨日、彼女、英語、のどの部分を否定しているんですか? この英文だけで判断できますか? 話の流れを無視しては読み取れません。
彼ではなく別の人間なのか? いつもは勉強しているのか? 別の人間と勉強したのか? 別の科目は勉強したのか? など想像が膨らみます。
4) 英文構造(文法・語法も含め)を軽視しない。 何のための文法ですか?
文法の軽視で誤解を招くケースはいろいろあります。きちんと読むことが重要!
This is all you have to make the salad.
×これはあなたがそのサラダを作らねばならないすべてです(???)。
〇これはあなたがそのサラダを作るのに必要な材料のすべてです。
間違えた原因は、have to V=~しなければならないと思い込んでいるからです。
Allとyou ~のつながりを無視しています。all (that) you have / to make ~と読むことになぜ気づかないのでしょう? have の後ろに目的語の□(ブランク)を感じ取っていないからです。他動詞の後ろに目的語を探すのは大原則の一つですよ。これを徹底して頭に叩き込まないと、英文で最も多いSV~. の様々なパターンに対応できません。
5) 英単語・熟語の表面的暗記をやめる。 意味ではなく使い方を定着させて。
毎週単語テストがあり、量が多く単語の使われ方まで勉強する時間がない学生さんは、確かに多いです。中学で単語を1000個くらいしか暗記させない日本の英語教育に問題があると言うのは簡単で無責任です。
但し、隣の中国や韓国では、2~3倍は暗記しています。高校での負担を軽減するためであり、階段の踊り場と同じで、小休止する(基本語の定着に力を入れる)時期が必要なのを知っているからです。日本の高校生は、定着させる時間もなく、闇雲に単語の一義的な意味を暗記させられているのが現状です。
6) 幅広い読書で現代文読解にも力を入れる。 英語が読めない理由は母国語にも?
時事問題レベルの英文が出される大学受験では、背景知識のみならず日本語の語彙を強化しておくべきです。上手く日本語に出来ずに苦しんでいる学生は多いです。
代表的な和訳語は暗記しましょう。和訳の答案で貧弱な日本語では知的レベルを見透かされてしまいます。
7) off, awayなどの働きをイメージする。 イディオムの丸暗記をしていませんか?
upを使い、そのイメージを持つことの有益さを考えてみて下さい。
pull up(車を止める)となるのはなぜか? Up のイメージからすると、上に引っ張ることになるのに……。駐車するときにパーキングブレーキを引き上げる動作を考えれば納得します。
では、hang up は「電話を切る」ですが、分かりますか? 初期の電話は壁掛けで切るときに受話器を引っかけて上にあげていたからですね。外国人が日本語を暗記するときも、なぜ、「切る」になるのかを考えるでしょうね。でも、少し頭を働かせれば分かります。電話回線を切るからですかね。
8) 定型表現の変化を見破る。 実際の英文がパターン通りであるはずがないでしょ!
これも、7同様に実際の表現で考えてみます。
To my surprise = (私の驚いたことには)という表現は、受験生必須の表現です。
では、To the surprise of all the students ならどうですか? 途端にできない学生が増えます。my(所有格)= one’sと決め込んでいるのです。of all the students の部分も所有を表していますよね、外見が違って見えているに過ぎません。
had better V (Vした方がよい)でも、You better be my best friends!! なんて平気で使用されています。「型より入りて型より出る」は、もう亡くなられた駿台予備校の伊藤先生の言葉ですが、現実の英語は型どおりではなく、それから脱しているのです。最初に型の習熟に時間を割きますが、「型破りの英語」にも数多く触れておく必要があります。
9) コロケーションの習得に時間を割く。 スピーキング能力がないのは何故ですか?
7,8との関連です。コロケーション重視の書籍は近年よく見かけます。その割には、高校生の英語力が向上したとは思えません。一体、なぜでしょう???
原因はいくつか考えられますが、ひとつは、単純な和訳の連結(コロケーション無視)です。無視すると変な英語を創造してしまいます。
go fishing(釣りに行く)や The sun rises.(日が昇る)は、知っていますよね。でも、(川に釣りに行く)や(日は東から昇る)とかになると変になります。
×I go fishing to the river. ×The sun rises from the east.
×の文だと、釣りをしながら川まで行く(笑)で自爆です。
×の文だと、ある、東の所から日が昇るに聞こえます。アリエナイ。
〇I go fishing in the river. 〇The sun rises in the east. となります。
何で、こんな初歩的なミスをするのか。単純に日本語を英語にしてつなげただけですよね。川で釣りという行為を行い、東の方角で上昇現象が起きると考えているからですね。なるほど~。そういう考え方も出来るなぁと感心して下さい。
10) 徹底的に音読をする。 音読の効用を実感したことはありますか?
最後ですが、音読の徹底を取り上げます。スピーキング能力を上げることを考えると、積極的に実施して欲しいことです。私の体験談で恐縮ですが役に立てばと思い紹介します。
中国の上海を旅行した時のことです。
道に迷い、通行人に「安くて旨い料理店までの道順を教えて下さい。」と教えてもらおうと思いました。NHKの会話で何て言ったかな~、でも出てこない!!
しかし、仕事の合間、車を運転しながら何回も音読し続けたフレーズをバンバン喋りました。こんな感じです。「私はとてもおなかが空いている。」「何か安くて美味しい中華料理を食べたい。」「いい店を知っていますか?」 そうしたら、相手の中国人が道順だけでなく、人気メニュー、値段や注意事項を親切に教えてくれました。そして、最後に、「あなたの中国語上手だねぇ」でした。
話したフレーズは、瞬間的に出てくるまで、また、中国人の先生と同じ感じになるまで何百回も繰り返しました。
音読、音読と繰り返されても、その効果を実体験しないと行動には移さないのが 現実ではないでしょうか。一度、CDなどを活用して一定量の英文(覚えてみたい) を暗唱してみてはどうですか? 出来れば、学校の外国人の先生に使ってみては どうでしょう。きっと、良い反応が得られると思います。
以上、10項目に関してお話ししました。総括として、特に大事な点を強調しておきます。
*英文法・語法の勉強は読解や作文に役立てる方向で、バラバラに勉強しないのがよいですよ。文法問題で例文を暗唱(音読)し、問題だけ解ければ終わりにしないで下さい。
*単語・熟語は音読し実際の英文の中で定着(意味や使い方)させて下さい。
定着した表現は、ライティングやスピーキングで使うのが大事です。
*「読解力をつける目的の本」は、自分で選び、その中に書いてある原則的なものを
徹底的に守って2~3ヶ月程は続けて下さい。原則を守り英文を読んでいく中で
原則に外れたケースに遭遇すると思いますが、やはりその後も原則を守り続けて
下さい。すると、自然に、最初に覚えた大原則が無意識の内に守られていることに
気づくでしょう。後は、「型より出る」の状態にシフトして行くだけです。
バットスイングにせよ、ドリブルにせよ、またピアノやギターの指の運びにせよ、
上手くなるには基本事項が潜在意識下に沈むまでの徹底反復あるのみです。
イチローや大谷もいつものルーティンを続けてきた、続けているハズです!