その3
③ ワーキングメモリーを鍛え、事務処理能力を上げる
ワーキングメモリー(作動記憶)とは、1960年代に発表された記憶に関する概念で、情報を一時的に脳に保持しながら、その情報を
操作し利用することを含む、一連の処理能力のことで、会話や文章読解、計算といった学習を支える重要な能力のことです。
世間一般では、これを地頭の良さと呼ぶのかもしれませんが、ワーキングメモリーの能力が高い人は、複数のことを同時にこなした
り、頭の中に記憶しておいて順番に処理できるわけで、特に日々の学習・受験勉強においては重要な能力といえます。
そしてこの能力は、生まれつきの能力と言われていた時代もありましたが、最近の研究では効果的な鍛え方も明らかになっています。
一つは、運動と知的作業を並行して行うとことです。例えば、ランニングしながらその日に覚えた英単語を思い出すとか、風呂場で
頭を洗っているときに有機化学の反応経路を思い出す、などです。両手を使うピアノやギターの演奏習得もマルチタスクの一例です。
トランプの神経衰弱、数独(大学入試でも出題歴あり)、クロスワードパズルなども、遊び感覚でワーキングメモリーを鍛えられるでしょう。ちなみに、2000年代初頭に行われた東京大学合格者へのアンケートで、学習塾関係以外で子供時代に最も多かった習い事はピアノでした。(近年は水泳の方が上位に来るようです。)
また、最近の脳科学によると1日10分程度の瞑想(マインドフルネス)もワーキングメモリーの解放に有効と言われています。
他に数学の計算力に直結することといえば、低学年時ならそろばんも有効ですが、日頃から暗算を取り入れることです。計算が得意な人は既にやっていると思いますが、2桁×1桁、3桁どうしの加減、一桁の整数係数の連立方程式くらいは鉛筆を持たずに答える、などです。ただし、3桁×3桁のように複雑すぎて余計時間がかかってしまうようなことは無理に暗算せず筆算した方が速いので、自分のキャパシティを超えすぎない程度に取り組むとよいでしょう。
東北大学加齢医学研究所の川島隆太教授らによって開発された脳トレゲームもあります。暗算できる程度の計算式が1つずつ順番に表示され、3問目が表示されたときに1問目の数値を答え、4問目が表示されたときに2問目の数値を答える、といった感じでワーキングメモリーが鍛えられます。1日10分のトレーニングを2ヶ月以上継続して行うことでワーキングメモリーを司る大脳皮質の前頭前野部の体積が増加することが判明したという結果も報告されています。
スピードがつくと試験時に見直す時間も取れるようになりますので、結果として計算ミスも減るでしょう。受験学年にもなるとこんなことをやる時間的余裕はなかなかないと思いますが、脳に多少の負荷をかける暗算も効果的ということです。
ワーキングメモリーを鍛える時期は受験期以前の低学齢期ほど有効と言えます。
その4
④ 余白の使い方(スペーシング)を決める [共通テスト対策用]
共通テスト形式のように、問題が載っているページの余白に計算しなければならないマーク式のテストでは、テスト後の問題用紙を見比べれば余白の使い方でかなり個人差があるようです。要領が悪い人ほど手当たり次第にあっち、こっちに書いてしまい、解答の流れが分からなくなってしまい、「それで見直しできるの?」と思わざるを得ないような書き方をする人がいます。しかし、計算過程は問題と同じページに、見直しができるように収めたいですよね。
そこで、オススメなのが計算するページの問題用紙を半分に折って折り目をつけ、左右2つに分けて使うと良いでしょう。
左上から順に詰めて答案の本筋や計算式を書き、途中で発生する枝葉の計算(3桁×2桁など)は問題用紙の上端、左端、右端、下端を使います。こうすることで、コンパクトに省スペースで解答できるようになるはずです。
余白の使い方(スペーシング)を工夫することで見直ししやすくなって計算間違いを減らすだけでなく、総合得点力を上げる技法として参考にして頂けたらと思います。