その5
⑤ そもそも計算しない(極力計算を回避し、知識でカバーする)
今更ながら、なぜ計算ミスが発生するのでしょうか? それは、ごく当たり前と言えば当たり前かもしれませんが、計算するからです。計算するから、計算間違いのリスクが生じるのです。
では、極力計算しないためには、どうすればよいでしょうか? 答えは簡単で、習慣的な取り組みにより、数の性質やよく出る計算結果を記憶しておくのです。例えば、20以下の整数どうしの積を覚える(またはインド式計算法を習得する)のもよいでしょう。
おそらく、計算が遅くて間違いが多い人は、普段からただ漫然と計算をしていて、3/8=0.375、1/7=0.142857⋯ (人の世にはこんな数がある) といった算数レベルの事柄や、2^10=1024、24^2=576 といった指数計算値、√7=2.7264⋯ (菜に虫)、
√10=3.16227⋯(債務に鮒) >π=3.14⋯ といった平方根の性質、場合の数で頻出の8C3=56、9C3=84、7!=5040 や、2桁×1桁の答え、∫[0≦x≦1]1/(x^2+1) dx=π/4 といった積分値、他にも倍数の判定方法、100以下の素数などを、覚えていない( 見た瞬間に判断できない ) のではないでしょうか。計算を軽んじている人は、例えば「約数が3つの整数は素数の平方数」という整数問題を解いても、残念ながらそれを覚えようとしません。 計算の遅さを知識でカバーしようという意識がないのです。
一方で、化学の計算が得意な人は、硫酸H2SO4の分子量:98、二糖類C12H22O11の分子量:342、5.6/22.4=0.25 などは覚えていて、問題を解くときにいちいち計算しません。(どうしても試験時に不安で確かめたいときは仕方ないですが。)
日頃の学習でよく出てくる計算式と結果も意識して覚えることで、知識に変えていきましょう。計算自体を避けることでミスがなくなり、スピードも上がり、学習効率もよくなります。
その6
⑥ 検算により、修正力をつける
計算間違いを減らすことも大事ですが、それ以上に重要なのは計算間違いを見つけて修正する能力を身に付けることです。どんなに注意しても人間のやることなので、計算間違いを完全になくすことは無理でしょう。私共、数学指導のプロでも計算間違いをすることはありますし、大学の数学教授でも間違うことはあります。だから、計算間違いは生じうる、という前提で修正力も付けるべきです。 実際、数学が得手・不得手の差は、この修正スキルの差に最もよく現れているように思います。
では、具体的に計算間違いを見つけて修正するには、どうすればよいでしょうか?
それは、検算の徹底です。これは試験の解き方の重要ポイントの1つですが、例えば図形の計量問題なら、ヘロンの公式、トレミーの定理を使って検算できることがありますし、確率 p を用いて答える問題なら p=0、0.5、1 を代入することで妥当かどうか判断できたり、恒等式なら x=0、x=±1 などの簡単な値を代入して等式が成立するか確認できますね。θ を含む三角関数の答えなら、θ に 30°、90° など具体的な値を代入して妥当性が分かります。整関数と直線で囲まれた面積なら、1/3、1/6、1/12、1/30 の公式で確かめられますし、軌跡の式なら条件に合う図を書くことで式と照らし合わせて妥当かどうか判断できます。数列なら n=2 あたりを代入すれば検算できますし、極限計算ならロピタルの定理、回転体の求積なら、バウムクーヘン分割法やパップス・ギュルダンの定理があります。このように、普段から別解として様々な解法を身に付けておくことも重要です。
以上まとめになりますが、結局のところ、計算ミスで失点しない人というのは、極力計算ミスしないよう不断の努力により周到な備えをしている人で、仮に間違えても自ら気付いて修正できる能力を持つ人のことではないでしょうか。
最後になりますが、みなさんが各種テストで計算ミスなくこなせるようになることを応援しております。実際にマンツ―マンで指導を受けてみたい、という方は、是非ディック学園にお問い合わせ下さいませ。